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いろはにほへと

日本の建築、特に木造建築では昔ながらの用語が現在でも色濃く残っていて
例えば寸法体系にしても、大工さんとの会話では尺貫法がよく用いられます。

実社会に出たとき、一番ワケが分からなくて印象に残っているのがコレ。
「インゴサンゴサンゾクモッテコイ!」翻訳すると
「1寸5分(45㎜)×3寸5分(105㎜)の木材を3束分持って来てはいただけないでしょうか?」
と、大工さんはおっしゃっておる訳です。

木造建築の多くが91センチを基本モジュールとしているのは、この尺貫法の名残りなんです。
(一尺 → 約30.3センチ 3尺→約90.9センチ≒91センチ)

またプレカット図でグリッドの順番を表したり、金物の強度を表現したりするのには
「いろはにほへと」が使われます。

金物の場合「いろは・・・」が後に行くほど高強度になっていて、
これは「は」の金物です。(引抜き耐力5.1kN)
「は」の金物の写真
「へ」の金物。(引抜き耐力10kN)
「へ」の金物の写真
「と」の金物。(引抜き耐力15kN)
「と」以上は写真のようにホールダウン金物を使用する事が多くなります。
「と」の金物の写真
構造計算書には簡易的な平面図上に、金物の種類が「いろは・・・」で表示されているので
『通り土間の家』でもそれを元に全箇所チェックして来ました。

新しい工法や建材などもどんどん登場する中、一般社会ではあまり用いられなくなった
表現方法がいまだ当たり前なのはおもしろい事ですね。
正直なところ、いきなり「ぬ」とか「を」とか言われてもどちらが前なのか感覚的に
分かりにくいのですが、近代化の波に淘汰されず、ずっと残って行ってほしい文化です。


2017.08.25 | Category 通り土間の家, 建築