『通り土間の家』の外壁“そとん壁”が仕上がりました。
そとん壁は100%自然素材を使用した、高千穂シラスさんの左官外壁です。
完全防水ながら透湿性能は抜群。ん、水は防いで水蒸気を含んだ空気は通す・・・?
空気が通る隙間があるなら水なんて余裕でダダ漏れでしょうと思われるかも知れませんが
そうではないんです。
ちょっと中学校の理科を思い出してみましょうか。
水と水蒸気の分子を化学式で表すと、どちらも同じH2O(エイチツーオー)ですね。
イメージとして、H2O分子が単体でバラバラに浮遊しているのが水蒸気(気体)で
H2Oが多く集まってくっついた状態で存在しているのが水(液体)です。
つまりミクロの視点で見たとき、お一人様(水蒸気)なら通れるけど、固く手を繋いだ
団体さん(水)になると通れない、そんな微細な孔がたくさん空いた素材なんです。
ちなみにお湯を沸かしたときに立ちのぼる、目に見える白い湯気。
あれは気体ではなく“ごく細かい水滴=液体”なので当然通れませんよ。
性能的にも素晴らしいそとん壁ですが、やはり一番の魅力はその見た目でしょうね。
荒々しくも優しくも見える表情、自然をそのまま壁にしたような落ち着いた佇まい。
安定して供給可能な外壁材として、これ以上に魅力的なものは今ちょっと思いつきません。
難点としては、施工費を含めた価格がまぁとにかく高いため、気軽に誰でも使える
外壁ではないという事。この家でも、実は外壁は一旦別のもので決定していました。
その後僕がこの外壁と出会ってしまったためにお施主さんに提案→気に入って頂いて
変更となった経緯があります。
よくこれを受け入れてくれたなと、施主のOさんには感謝するばかりです。
その決断があり、この家を象徴する風格あるファサードができあがりました。