『通り土間の家』現場でフローリングを施工中の大工さん。
使用しているのはナラの無垢フローリング。
無垢のフローリングには塗装済みの商品と無塗装の商品があります。
塗装品の場合、ラインナップの中に好みの色があればそれで問題ないのですが
毎回うまくそれがハマるとは限りません。
そんな時は無塗装品を仕入れて、塗装屋さんに指定した色を着色してもらいます。
今回もそうした方法で、サンプルに合わせて別途着色したものを用意した訳ですが
現場を見たお施主さんから「なんだか記憶より色が濃い気がする」と連絡が・・・。
色に関しては相当気を使った部分で、まず実際に使用する無塗装のフローリングを
事前に用意して、色合わせをした塗装サンプルを複数作ってもらいました。
色決めで使用したサンプルと違いが無い事を確認した上でGOサインを出したので
大丈夫なはずとは思いつつも、結構ドキドキしながらすぐ現場へ。
手前が色決めで使用したサンプル。奥がそれに色を合わせて塗装した実際のフローリング。
貼られる前の山から抜き出して比較してみた画像です。
でも上の施工中写真をあらためて見ると、奥の方が少しだけ濃いですよね?
たとえ全く同じ塗料を同じように塗装したとしても、なにぶん相手は無垢の天然素材。
同じロットでも塗料の入り易い材とそうでない材があるため、こうした差ができます。
これは規格化された塗装品でも同じ事で、どうしても全て均一な指定通りの色に、とは
行かないのが申し訳ないところですが、かなり頑張ってくれたレベルだと思います。
中間検査の金物チェックも終わり、壁の中にも断熱材が施工されていました。
窓から見える緑がきれいです。
『通り土間の家』で大工さんが使っていたRadio。
makitaといえば電動工具が真っ先に思いつきますが、こんなのもあるんですね。
道具然とした武骨さがたまりません。
発音は“レディオ”でお願いします。壊れかけてはいません。
工具や材料がキチンと整理された現場は気持ちが良いですね^^
日本の建築、特に木造建築では昔ながらの用語が現在でも色濃く残っていて
例えば寸法体系にしても、大工さんとの会話では尺貫法がよく用いられます。
実社会に出たとき、一番ワケが分からなくて印象に残っているのがコレ。
「インゴサンゴサンゾクモッテコイ!」翻訳すると
「1寸5分(45㎜)×3寸5分(105㎜)の木材を3束分持って来てはいただけないでしょうか?」
と、大工さんはおっしゃっておる訳です。
木造建築の多くが91センチを基本モジュールとしているのは、この尺貫法の名残りなんです。
(一尺 → 約30.3センチ 3尺→約90.9センチ≒91センチ)
またプレカット図でグリッドの順番を表したり、金物の強度を表現したりするのには
「いろはにほへと」が使われます。
金物の場合「いろは・・・」が後に行くほど高強度になっていて、
これは「は」の金物です。(引抜き耐力5.1kN)
「へ」の金物。(引抜き耐力10kN)
「と」の金物。(引抜き耐力15kN)
「と」以上は写真のようにホールダウン金物を使用する事が多くなります。
構造計算書には簡易的な平面図上に、金物の種類が「いろは・・・」で表示されているので
『通り土間の家』でもそれを元に全箇所チェックして来ました。
新しい工法や建材などもどんどん登場する中、一般社会ではあまり用いられなくなった
表現方法がいまだ当たり前なのはおもしろい事ですね。
正直なところ、いきなり「ぬ」とか「を」とか言われてもどちらが前なのか感覚的に
分かりにくいのですが、近代化の波に淘汰されず、ずっと残って行ってほしい文化です。
外壁の下地として用いられる耐力面材。
いつもは“ダイライト”や“ハイベストウッド”という商品を使う事が多いですが
『通り土間の家』では“モイス”という耐力面材を使用します。
商品名のアルファベット表記は“MOISS”。
透湿性能に優れていて、【湿気】を意味する【Moisture】から取っている気がしますね。
上に挙げた3種類、それぞれ微妙に特性が異なり、外壁仕上げに使用する“そとん壁”の
下地材としてメーカーさんとも相談の上判断しました。
そとん壁(別記事で後述)という左官仕上げの壁は、合計20ミリ程度の塗厚があります。
塗りつける面にラス(金網)をビス留めした上で塗っていく訳ですが、モイスは材自体に
粘りがあるため直接ビスを打つことが出来、しかもしっかりそれが効いてくれるのです。
相当な重量になる左官壁にとってはここの安心感は非常に重要。
ダイライトは材が硬質なためビス留めには向かないという話はよく聞きますし、
ハイベストウッドはビスは効くものの強度的にはモイスの方にアドバンテージが
あります。(モイスの壁倍率は通常で2.5倍、釘ピッチ調整でMAX2.7倍まで可能)
価格はこの3つの中でモイスが最上位なため、妄信的に全物件モイスで統一と
いうのも考え物ですが、適材適所、必要があるときには大変心強い建材です。
お施主さんから「土間が欲しい」という話が出たのはいつ頃だったでしょうか。
間取りの打合せをしていた段階で、突然登場した“土間”という要素。
愛犬たちが遊ぶスペースも兼ねた土間を主題として、プランの練り直しが行われました。
『通り土間の家』で、ようやくそれが実際の形として見えてきた写真です。
お施主さんと僕とでずっと共通認識として持っていたのは、真っ直ぐな土間から
きれいに視線が抜けて、そこから裏に広がる緑が眺められること。
こうして見ると、新緑の季節などは予想以上に窓からの景色が緑で埋め尽くされる
事が分かりました。
数日後の写真。天井下地の造作が少し進んでいます。
土間全体がやわらかい光で満たされるよう、長手方向には間接照明を入れる予定です。
『通り土間の家』の屋根防水材です。
“ゴムアス”と書いてありますね。正式名称“改質ゴムアスファルトルーフィング”。
KMEWさんのイーグルガードという商品です。
通常、屋根材に瓦や板金を用いた建築物の屋根は二重に防水がなされています。
まず一番表面で雨を遮るのは屋根の仕上げ材(瓦・板金など)。
ところがこれら仕上げ材はそのつくり上、完全に隙間なく施工されている訳ではありません。
通気用の隙間を含め、ある程度の風雨が入る余地はあるのです。
台風などの暴風雨に遭うと、仕上げの防水は突破されてしまう事は珍しくないんですね。
まず間違いなく起こるその事態への備えとして、下地としての防水層が必要になります。
最後の砦であるにも関わらず、その防御力が貧弱だったら、また耐久力が無かったら
・・・マズいですよね。
一般的にはアスファルトルーフィング940という規格のものが多い印象を持っていますが、
この家では更に上の耐久性を持ったゴムアスを使用しています。
「そろそろ屋根の葺き替えを・・・」なんて話も出てくるかもしれない25年先、30年先。
その時までちゃんと性能を保ってくれる防水材です。
建て方を終えた『通り土間の家』。
当設計事務所では、“自然との融合”というものを大事に考えています。
これはちょっと融合しすぎた例ですので、あとで剪定します。
建方の続きです。
足場の上で作業をしているのは電気屋さん。
・・・電気屋さん?建方の日に??
そう、普通はいないんですよ、建方に電気屋さんは。でも今回はこの方々の力が必須。
理由はこれ↓
リビングダイニングの天井は化粧垂木と化粧野地で構成され、これで完成です。
更にこの上の層には断熱層と通気層を確保するため、もう一回垂木を重ねてその上に屋根。
雨仕舞の観点から、これらは全部建方当日に終わらせてしまう必要性があります。
すべて化粧なだけに、工程上、後から配線をする余地がまったく無いんですね。
化粧野地まで出来た段階で一旦大工さんは休憩、その間に電気屋さんが配線、そしてすぐ
断熱材を入れて屋根伏せです。
電気配線が終わりました。
ここで見えている垂木が構造を担う垂木で、化粧垂木とは別部材。
黄色い配線の下にある杉板が、先程の写真で見えていた勾配の付いた天井面です。
続いてすぐに屋根の断熱工事に移りました。
白い綿のような見た目をした“パーフェクトバリア”という断熱材を使用しています。
断熱材を入れながら、手分けして遮熱材も施工して行きます。
手前に見えるシルバーのものが遮熱材。断熱層+遮熱材+通気層で夏場の日射対策です。
これを見ると、前回の記事で書いた“絶対に雨に降ってもらっては困る”理由が
お分かり頂けるかと思います。
雨天でこの断熱施工は無理ですからね。本当に晴れて良かったです。
ここまで来ればもう一息。一気に野地合板を貼って行きます。
構造計算により、通常12㎜の合板もこの家では倍の24㎜。こうして屋根面の剛性を
高めることで、火打ち梁無しのスッキリした空間を実現しています。
1階部分の合板がすべて貼れました。当然釘打ちピッチも確認済み。
あとは防水層であるアスファルトルーフィングを施工し、2日間に渡る建て方が終了。
初めての試みで監督さんや電気屋さんとの事前打ち合わせ、天候の事、作業が滞らないよう
かなり神経を使いましたが、無事終えることができました。