内部の資材も減り、落ち着いてきたな~と思っていたら再びの大混雑。
居間の吹抜全体にドーンと内部足場が出来ていました。
手が届く範囲のプラスターボードはほとんど貼り終えましたが、高い所は足場を組みます。
階段部分。窓から陽の光が射しこんでいます。
内装の仕上げ工事に向け、現場は着々と進んでいます。ここからは早いですよ~!
発注していた大谷石の沓脱石が『通り土間の家』の玄関に設置されました。
家に上がるときは靴を脱ぐ習慣のある、日本ならではの文化ですね。
室内を神聖な場所と考える日本では、これが外界との明確な線引き、一種の結界とされます。
そう考えるとやはり日本産の石が相応しいだろうし、沓脱石が引き立つしつらえにしたい。
床と土間の段差を解消するための、単なるステップとは少々意味が違うのです。
近年建てられた家を外から見たとき“窓に色が付いているな”と感じたことはありませんか?
ブルーだったりグリーンだったり、ブラウンっぽいのもありますね。
今では当たり前のように使われていますが、改めて説明するとあれは“Low-Eガラス”です。
Low-Eガラスとはペアガラスの空気層側に来る面に、金属膜をコーティングしたガラスの事。
ペアガラスが持つ空気層の、室外側に被膜をしたものは外からの熱線を室内に入れにくく
空気層の室内側に被膜をしたものは室内の熱を外へ逃がしにくくする性質があります。
普通の透明ガラスと比べると、窓際での体感温度はもう全然違いますよ!
ここ『通り土間の家』でもLow-Eガラスを使用していますが、上記の特性を考えた上
外部からの日射を遮りたい場所には遮熱タイプのLow-Eガラスを、それほど直射は受けず
むしろ冬場の熱損失を防ぐ事を重視したい場所には断熱タイプのLow-Eガラスをと
いった具合に、場所によってLow-Eガラスの種類を使い分けています。
Low-Eガラスの色に関しては少し面白い(僕はあまり歓迎してませんが)特性があって、
外から見たガラスの色がブルータイプのものは室内から見た景色が若干ブラウン寄りに
見え、反対にブラウンタイプのものは室内からの景色がブルー寄りに見えます。
これは外から室内に入って来る様々な色を持った自然光から、例えばブルータイプでは
「青の波長を跳ね返している」んですね。だからガラス自体は青く見えるし、
そこで青の波長が減った分、室内からは少しだけ外が違う色に見えるんです。
勝手な考察ですが、概ねそういう理屈で合ってると思います。
この現象に気づいたばかりの頃は、もうそれが気になって気になって・・・
「青空が青空に見えない」とかかっこいいセリフを垂れ流しながら一人サンプル比較
したりしていたんですが、僕が慣れたのか商品が改善されたのか、いつの頃からか
それほどの違和感は感じないようになりました。
一時は“Low-Eガラス使いたくない”とさえ思っていたのに、慣れって怖いですね。
予定していた『通り土間の家』の照明器具入荷が間に合わず困っていたところ
力を貸してくれる方が見つかった話を一つ前の記事で書きました。
間に合わない事が判明した日『通り土間の家』で工事をお願いしている電気屋さんから
電話がありました。岡崎市の瀬筒電気さんという方です。
「少し思い当たる事があり、代替品の依頼先が見つかるかもしれない」という話でした。
一旦切ってしばらく待っているとまた瀬筒さんから電話で
「照明器具を作ってこれからブランドを立ち上げる予定の人が知り合いにいて、
今はその準備期間なのでフルオーダーの照明器具製作でも十分相談に乗れる。
商品開発の意味もあり、その人も是非力になりたいと言ってくれている」・・・と。
こんなタイミングでこんな事ってあるでしょうか。
しかも昨日のブログで紹介した通り、作品のクオリティやセンスは抜群。
聞けば瀬筒さん、元々予定していた器具が間に合わないとなった時点で今回の作家さんに
話を持って行ってくれたらしいのです。本当にありがたい・・・。
思えばこの家の施工店がまだ決まっていなかったとき、既設電気メーターの処理や
手続きで相談に乗ってくれたのが瀬筒電気さんでした。
まだ正式に仕事として依頼できるか分からない状態にも関わらず、本当に親切に
対応してくれる姿を見て“電気工事をこの人にお願いできたらな”と強く思いました。
そしてこの家の施工店である後藤建築さんを紹介してくれたのも瀬筒さん。
5年前、独立と同時に浜松から岡崎に引っ越してきた僕は、当時こちらでの知り合いは
ほぼゼロの状態でした。だからこそ余計に、人と人の繋がりに温かさとかありがたみを
感じるのです。今回の事もそうですが、そうした小さな偶然の縁が少しづつ増ていって
今は同じ志を持った信頼のおける建築仲間がまわりにたくさんいてくれます。
今更ですがみなさん、いつも本当にありがとうございます。
最近、お気に入りの真鍮製照明器具が手に入りにくくなっています。
元々大量生産されている照明作家さんではなく、納期1ケ月待ちとかは当たり前でしたが
どうやらここのところ、注文が殺到しすぎて本当に苦労してみえるご様子。
現在納期も4ケ月待ちと、新規での注文は気の毒に思えてしまうほどです。
『通り土間の家』でもこの作家さんの照明を予定しており、注文時期も相当な余裕をみて
いたのですが、なんと注文時点で間に合わない事が判明。
お施主さんには謝って何か代替品を探しますと伝えたものの、さて実際どうしたものかと
思案していたところ・・・見つかったのです!
その経緯は、ちゃんと感謝をこめて書きたいので次回分に別で書きます。
ともかく素晴らしい技術をもった作家さんが協力してくれることになりました!
伝えたイメージですぐに試作品の製作に取り掛かってくれ、完成の連絡があったので
今回はその作業場へお邪魔し、出来上がった照明器具の試作品を見せてもらう事に。
これです!こういうのを求めてるんですよ、我々設計者は!本当に期待以上です。
今回お願いしたのは照明器具だけですが、その他サンプル類も見せてもらいました。
無垢の真鍮製でここまでのものは大手金物メーカーからは出てないですからね。
だからこそ日々、腕とセンスの良い作家さんを探しているんです。
さっそく施主のOさんにも報告し、大変気に入っていただきました^^
この作家さん、実は年始のブランド立ち上げに向けて準備を進めてみえる最中。
だからこそ急な話にも関わらず、器具開発にじっくり対応していただけた訳です。
HPで紹介の了承はいただきましたが、それで万が一にもご迷惑になってはいけないので
この方のブランドが正式に始動しましたら改めて紹介したいと思います。
本日はお忙しい中ありがとうございました。
今後ともお付き合いよろしくお願いいたします!
大工造作が続く『通り土間の家』。
この合板を貼った作業台はリビングからも良く見える場所にあります。
表面の仕上げにはちょっと凝った事をする予定で、今から楽しみです。
窓台は全部タモの無垢材です。集成材を使う事もありますが、やっぱり無垢はいいですね。
これは監督さんが気を回してくれた場所のひとつ。
引込み戸の扉を引込む部分のそで壁です。普通の壁より薄くなるため反りが出やすく
それを防ぐためスチールのアングルで中から補強をしてありました。
図面に指示が無くても、そこかしこでこんな気遣いをしてくれています。
大工造作の期間というのは、現場ではそれほど際立った変化が見られない時期が続きます。
そうした期間を終え『通り土間の家』では壁の石膏ボードが貼られ始めていました。
屋根の勾配がそのまま天井の形に現れてくる2階。
階段の吹抜部分にもすでに石膏ボードが貼られています。
ここも下りる方向へ向かっての勾配天井。その先に窓が付いています。
クロスを貼る前には、ボード同士の継ぎ目など段差があるところにパテ処理を施します。
この家では、というかこれまでの物件大半がそうですが使用しているのは通気クロス。
一般的に多く用いられるビニールクロスよりも相対的に薄いものが多く、下地の凸凹
を拾いやすいため、出来る限りパテで下地面を平滑に仕上げておきます。
厚めのビニールクロスは下地の凹凸を拾いにくい、クリーナー剤で拭けるといった利点が
ある一方、調湿・通気性能や質感ではどうしても自然素材系のクロスには敵いません。
いくらマットな質感にしたくても、ビニールだけに表面に独特のテカリが出るのです。
当事務所としては上記の観点から、クロスであれば自然素材系をオススメしていますが
これからクロスを選ばれる方のために、敢えて自然素材系クロスの“悪い点”を
ちょっと誇張気味に挙げてみます。
・厚さ問題とは別に施工の方法上、クロスをジョイントしてある部分は必ず見て分かる。
・部分補修向きでない。ひどいキズなら貼替えの可能性も。
・表面がビニールのようにツルツルでないため、汚れが付くと落ちない。
・住宅用洗剤などのクリーナーを使用した清掃はできない。
・貼替えの際も、薄いのできれいに剥がせない。
うわ~・・・誇張気味とはいえ、字面で改めて見ると辛いですね。
勿論これらデメリットと天秤にかけて、十分検討対象になりうる素材だからこそ使って
いるのですが、住まわれる方の家族構成や家庭環境を考慮の上提案しています。
いたずら盛りのお子さんがいる世代の場合は当然要注意ですし、ペットがいる場合は
その子が壁を引っ掻いたりする癖が無いかなども確認します。
対して幼児がいないとか、全員が成人しているなどの場合は自然素材系のクロス
であってもそれほど恐れる必要はありません。なるべく壁に触らないなど
少しの注意は必要ですが、その代わりに窓や照明からの光を受け、柔らかい反射光を
纏った落ち着いた壁面が手に入ります。
PS.自然素材を使ったクロスですが、汚れが付いてしまった場合には柔らかめの
消しゴムでそっとなぞって下さい。日常的なお手入れは、メーカーサイトによると
月に1回程度、ハタキでホコリを落とすぐらいが良いようです。
茶室で用いられる様式のひとつ“躙口(にじりぐち)”は、客人が庭を通って茶室へ入る
ときに使用する小さな出入り口の事。出入口で意識が圧縮される分、室内に入ると広く
感じるといった効果も考えられての事ですが、僕がもっと好きなのはその設計思想。
狭いにじり口を通る際、人は身をかがめ頭を下げるような姿勢で入室する事になります。
そして中で待つ亭主と一人間同士で向き合うといった、ある意味茶道の精神性から成る
人間の行動を建築に昇華したのがにじり口であると。そう解釈しています。
『通り土間の家』でも伝統的な茶室への憧憬として、にじり口を意識した個所があります。
ただしここを通るのは人ではなく、お施主さんの大切な家族、二頭の犬たちです。
居間からつながる長い土間の一部は、この犬たちのためのドッグスペース。
区切ることも開け放すこともできる、実用性を兼ねた土間空間です。