『通り土間の家』の玄関部分に設置する沓脱石を探すため、外構屋さんと小牧市まで。
午前中、ちょうどうまい具合にお隣の江南市で打合せだったのでその足で向かいました。
さすが豊富な在庫量を謳う造園資材会社。
外構屋さんから「たくさんありますよ」とは聞いていたものの、想像のはるか上を行く
世界各地から集められた大量の石材に圧倒されました。
石マニア垂涎の自然石の山。この写真は本当にごく、ごく、ごく一部で、多分全体から
すると百分の一の量にも全然届いていないんじゃないでしょうか。
アンティーク煉瓦と思われる材料もありました。
こちら、『通り土間の家』の沓脱石素材として、もともと大本命の大谷石。
ヤード内を歩き回り、石材の山も登りながら一通りの在庫を見てきました。
海外産のいろんな石に目移りしながらも、石選びに関してお施主さんに一任されていた
僕が最終的に選んだのはやっぱり大谷石。
目にした石たちを想像の中で玄関に置いてみて、一番すなおに納まってくれたのが
大谷石だったのと、和の家にはやはり日本産の石がいいなと思ったのがその理由です。
写真の石はサイズが条件に合わなかったため見送り、サイズ指定で注文して来ました。
図面を描いてスチール(鉄)で製作してもらった手すりとカウンターの脚。
『通り土間の家』ではこうしたスチールの部材をいろんな所に使用しています。
写真を撮り忘れてしまいましたが、物干し用のバーや洋服掛けなどもスチール製。
すでに取付けが済んでいました。
この家に限らず、いつもスチール部材を製作してもらうときに依頼する鉄工所さんは
決まっていて、スチール階段などの大物から手摺受けなどの小物まで、チャレンジ精神で
幅広く対応してくれます。
スチールで製作というと高額なイメージがありますが、そこもかなり良心的。
おかげで心置きなくスチールを使った提案をする事ができ、とても助かっています。
これからも頼りにしてます。
『通り土間の家』の外壁“そとん壁”が仕上がりました。
そとん壁は100%自然素材を使用した、高千穂シラスさんの左官外壁です。
完全防水ながら透湿性能は抜群。ん、水は防いで水蒸気を含んだ空気は通す・・・?
空気が通る隙間があるなら水なんて余裕でダダ漏れでしょうと思われるかも知れませんが
そうではないんです。
ちょっと中学校の理科を思い出してみましょうか。
水と水蒸気の分子を化学式で表すと、どちらも同じH2O(エイチツーオー)ですね。
イメージとして、H2O分子が単体でバラバラに浮遊しているのが水蒸気(気体)で
H2Oが多く集まってくっついた状態で存在しているのが水(液体)です。
つまりミクロの視点で見たとき、お一人様(水蒸気)なら通れるけど、固く手を繋いだ
団体さん(水)になると通れない、そんな微細な孔がたくさん空いた素材なんです。
ちなみにお湯を沸かしたときに立ちのぼる、目に見える白い湯気。
あれは気体ではなく“ごく細かい水滴=液体”なので当然通れませんよ。
性能的にも素晴らしいそとん壁ですが、やはり一番の魅力はその見た目でしょうね。
荒々しくも優しくも見える表情、自然をそのまま壁にしたような落ち着いた佇まい。
安定して供給可能な外壁材として、これ以上に魅力的なものは今ちょっと思いつきません。
難点としては、施工費を含めた価格がまぁとにかく高いため、気軽に誰でも使える
外壁ではないという事。この家でも、実は外壁は一旦別のもので決定していました。
その後僕がこの外壁と出会ってしまったためにお施主さんに提案→気に入って頂いて
変更となった経緯があります。
よくこれを受け入れてくれたなと、施主のOさんには感謝するばかりです。
その決断があり、この家を象徴する風格あるファサードができあがりました。
長野県の大桑村にある阿寺渓谷。
“阿寺ブルー”と称されるその澄み切った水の美しさは、そこら辺の川とは次元が違います。
カメラ:SONY NEX-7 レンズ:SIGMA 30mm F1.4 DC DN
木曽方面には親戚もあり、幼少期にこの辺りの川では何度も泳ぎました。
水中メガネを着けて潜ると、そこにはアマゴなど多くの渓流魚。
山からの澄んだ水とあってとにかく冷たく、長い時間はとても泳いでいられなかった
記憶があります。このあたりは紅葉もきれいですね。
毎年欠かさず行っている訳ではありませんが、ふと思い出しては訪れたくなる川です。
家の印象を決定づけるのに、外壁材は重要な要素のひとつですよね。
『通り土間の家』ではファサードに“そとん壁”という左官仕上げの材料を使います。
これは下塗り時の写真。この状態でしばらく乾燥させ、この後の仕上げ塗りに備えます。
仕上げがしっかりと乗るよう、櫛目が付けられています。
見た目はモルタルと似ていますが、決定的に違うのはその通気性能。
こう見えて壁全体がバッチリ通気してくれるんです。
そとん壁の採用を検討している段階から、販売元である高千穂シラスさんの
担当の方が施工方法等についていろいろと相談に乗って下さいました。
その過程で知って意外だったのが「そとん壁は通気層不要」という事。
上にも書きましたが、壁自体が通気するので特別に通気層を確保する必要が無く
その性能を生かすために下地は通気性能に優れたモイスにしているわけです。
もちろん通気層を作っても悪いわけではないんですけどね。
直塗りの方がクラック対策としては有効である事(逆だと思っていました)と、
通気層を作る分のコストが削減できる利点もあり、こちらの方法で施工となりました。
『通り土間の家』居間と土間の境界部分にある建具用の溝(戸車レール)です。
Vレールとよばれるタイプのもので、これは樹脂製です。
当初ここは木製のVレールを使う予定でしたが、木製は反りや摩耗が起こりやすいとの事で
なるべく色の近い樹脂製に決定。開け閉めが多いと思われる場所だからです。
写真を見るとそれぞれのレールが独立して床に埋め込まれていますね。
レールとレールの間に関しては、わざわざこの幅にフローリングを挽き割っています。
施工性で言えば、はじめから3本の溝が切られた既製品の敷居部材を使用した方が
シビアな位置出しの必要も無く、設計的にも施工的にも当然ずっと楽なのです。
ただしこういった場所でレール一体型の敷居を使うと雰囲気が台無しに・・・。
言われなければ気にもしない部分かも知れませんが、比べるとその差は圧倒的です。
今回はレールとフローリングの長手方向が平行ですが、大変なのは直行しているとき。
直行している枚数分、すべてのフローリングをレール間の幅に合わせて細かく
ジャストサイズでカットし、きれいにはめ込んで行かなくてはなりません。
またVレールと似た製品でYレールというものもあり、こちらは溝の両サイドが少し
張り出していて、わずかにフローリングの上から覆いかぶさるような納まりです。
レール際のフローリングカットが多少ガタ付いていても粗を隠してしまえるため
Vレールに比べれば精度の要求は幾分緩くなります。
Vレールが床仕上げと完全にフラットで納められるのに対し、Yレールは
床仕上げより1ミリ程度レールの方が高くなるんですね。
ほんのわずかな違いですが、Yレールは“床の上に乗っている”イメージです。
図面でVレールを指定すると、よく現場サイドから「Yレールではダメか」という
話が来ることがありますが・・・すみません、それは出来ない相談です。
『通り土間の家』の壁に施工された断熱材。
ここでは“パーフェクトバリア”という断熱材を使用しています。
一部孔が空いているのは換気扇を付けるところですね。
外回りも前回より少しだけ進みました。
軒天井が塗装され、外壁の横胴縁が取り付けられています。
『通り土間の家』の軒先部分です。
黒いメッシュ状に見えているのは通気部材。
家を永く持たせるため、また室内の快適な温熱環境を維持するために近年は通気の重要性が
多く説かれています。精度の高い現代の家づくりにおいては“目指さなくても”それなりに
気密性が高くなる傾向があり、如何に湿気・熱気を溜めないかに気を配る必要があります。
『通り土間の家』では屋根からの熱取得を最小限に抑えるため、断熱・遮熱・通気をもって
屋根を構成しています。
屋根断熱層の上に遮熱材を施し、遮熱材が遮断した熱は通気層を通って上部から放出。
小屋裏空間の無い勾配天井を採用する場合は特に最良の選択かと思います。