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一文字の家

高い天井、低い天井

内部の工事が進んでいる『一文字の家』。

2階から見た吹抜け部分。
現在は工事中の落下防止のため、木材で仮の手すりを付けてあります。
仮の手すりが付いた1.25間幅の吹抜の写真
窓から仮設手すりまでの吹抜け幅は1.25間(2,275ミリ)。
今までやったことのない幅で楽しみにしていましたが、リビングの床面積に対する吹抜の
サイズとしてとても良いバランスでした。
打合せの本当に一番最後、0.25間(455ミリ)だけここの幅を拡げる提案をして良かったです。

こちらは逆に、この家で一番天井の低い部屋。小屋裏収納です。
天井高750㎜の小屋裏収納
床から梁下までの高さは750ミリ程度。当初はその高さで天井を貼る予定でしたが
「少しでも天井高を確保したいなら、ここだけは梁出して天井貼りましょうか?」
との監督さんからの申し出に速攻で甘え、その場でお願いしました。

小屋裏収納の上は一段高くなったバルコニー。
この方角に岡崎市の花火大会が見えるようになります。
一段高くなったバルコニーの写真
現場では暑い室内で電気工事の職人さんが一人黙々と作業をされていました。
やはりこの時期の建築現場の暑さは、たとえ窓を開けていても相当に大変だと思います。
熱中症などには本当に気を付けてくださいね。


2016-08-28 | Category 一文字の家, 建築 

 

一粒で5度おいしい

『一文字の家』上棟日のときの写真です。

この家では寝室前にあるバルコニー内に1メートル程の段差を付け、スキップフロア形状の
バルコニーという少し珍しい作りになっています。
スキップフロアのように段差が付いたバルコニーの写真
お施主さんご家族が立っている場所が通常レベルのバルコニー、背後の高くなっている床面も
一段高くなったバルコニーです。(バルコニー相互の行き来は最後に階段を設置)
当然普通の高さで作るよりコストもかかりますが、それを補って余りある恩恵が得られると
判断したので、プラン初期より提案させていただきました。

1.防火網入りガラスの回避
準防火地域にあるこの敷地では、通常この位置に着く窓は防火網入りガラスになります。
窓よりも高さのある防火壁(外壁など)で囲まれた窓は防火仕様でなくてもOKという
除外規定を利用し、高額で見た目もイマイチな防火網入りガラスを回避しました。
(※この除外規定の適用は地域により判断が異なりますので、必ず事前確認が必要です)

2.外観を整える
道路から良く見える位置にあるこのバルコニー部分の外壁には、外観上の特徴でもある
一文字葺が用いられます。高い壁で窓を隠す事で一文字葺を強調し、よりシンボリックな
ファサードの形成を目指しました。

3.西日除け
日没前の数時間、このバルコニーの窓は強烈な西日が射す方角にあります。
窓よりも高い壁は、これに対しても日射遮蔽の観点から有効であると思われます。

4.外部からの騒音を緩和
家の目の前を通る大通り。お施主さんによると夜間もそれなりに交通量があるそうです。
高速道路沿いにあるような遮音壁とまでは行かなくても、窓を囲む形の高い壁には
ある程度の遮音効果も期待できると考えました。

5.これが最大の目玉!ここにバルコニーを作った一番の理由は・・・
実はこの場所、まさに昨日行われた岡崎市の花火大会がとても良く見える特等席なのです。
住宅レベルで1メートル視点が上がるという事は、見える景色に大きな差が出ます。
より条件の良い場所から花火を鑑賞できるように考えた結果、バルコニーの床は
スキップし、その下部にちょっとした収納空間も生まれました。

ということで、発想の出発点は花火なのです。
1~4までは、また異なる必要性で別の入り口から考え始めた事柄なのですが
最終的にはなんか花火の件とうまく利害関係がマッチしてくれたなあという感想です。
昨日終わったばかりの岡崎花火大会ですが、早くも来年の花火が待ち遠しいですね。


2016-08-07 | Category 一文字の家, 建築 

 

祝上棟!『一文字の家』

蒸し暑く、ときおり遠雷も聞こえる今日8月2日(大安)、『一文字の家』は上棟を迎えました。
お施主さんにとって、ずっと紙の上で想像することしかできなかった我が家が
ついに立体となって現実に現れる特別な日です。
Nさんおめでとうございます!
また平日にもかかわらずご予定を合わせて頂き、ありがとうございました。

即席の祭壇に用意された米と塩を家の四隅にまき、工事の無事を祈ります。
工事の無事を祈願する米と塩

完全な2層分の吹抜け。この部分は南に面して全面大きな窓が付けられます。
大きな窓の付く吹抜の写真
ところで、これまで Works に掲載した物件の中には、2層分の吹抜けがある家は
一軒も無かったんですね。
吹抜けは事務所スタッフ時代から数多く設計してきたイメージが強いので
今更ながらその事に気が付き、自分でも意外でした。

ようやく部屋の広さなどが体感できるようになった建物内を嬉しそうに見て回る
お施主さんの姿を見ていると、こちらも自分の事のように嬉しくなってしまいます。
訊かれても無いのに細かい設計意図を語り出しちゃったりなんかして・・・(笑)

今日は外部のパネル張りまでは行わず、ひとまず作業はここまで。
これから日一日と変化して行く現場が楽しみです^^


2016-08-02 | Category 一文字の家, 建築 

 

“お互い様”の関係性

基礎立ち上がり部分のコンクリート打設が終わった『一文字の家』。
木製型枠の年季の入り具合が、いよいよダンジョンの様相を呈して来ています。
木製の基礎型枠の写真
基礎から飛び出した短いボルトは、基礎と土台を固定するためのアンカーボルト。
1本極端に長いのが、基礎と柱とをつなぐホールダウン金物用アンカーです。
ホールダウンアンカーの写真
現場に立ち寄った際、裏に建っているお宅のご主人とちょうどお会いしました。
建築現場ではどう気を付けたって、ある程度の作業音は出てしまうもの。
仕方がない事とは言え、やはり申し訳ない気持ちが当然あります。

そのことを伝えると
“ここのお父さんとは昔からの付き合いで、全然大丈夫ですから気にせずやってください。
それにこんなのはお互い様ですからね” との、温かい言葉をかけて下さいました。

“お互い様”

工事をしてる側から言っちゃダメですが、言われると本当にホッとする言葉ですね。
もちろんそれに甘える事なく、近隣の方々への配慮は引き続き行っていく訳ですが
この言葉はお施主さんご家族が長年築いてこられた近隣の方々との良好な関係性や、
その人柄を物語っているようで嬉しくなりました。


2016-07-10 | Category 一文字の家, 建築 

 

基礎進行中

6月末に着工した『一文字の家』では基礎工事が進んでいます。

ベタ基礎の配筋。これは通称“シングルベタ基礎”といいます。
ベタ基礎のスラブ配筋

平らな部分の碁盤の目状の鉄筋を、更にもう一層入れるとダブル配筋のベタ基礎ですね。
鉄筋が2層に入る分、確かにシングル配筋に比べ高強度である事に間違いはないのですが
地耐力が特別低い場合など、ダブル配筋が本当に必要になるケースは割と稀です。
大は小を兼ねるとは言うものの、やはりそれには相応のコストがかかるのも事実。
過剰設計にならないよう、地耐力を勘案して適切な配筋計画としたいものです。

コンクリート製のスペーサー。現場ではサイコロ石とかピンコロなんて呼ばれています。
下に敷かれた防湿シート裏面にはさっそく水滴がついていますね。
こうして地中から上がって来る湿気が中に入るのを、コンクリートの手前で防いでいます。
コンクリート製のスペーサー

これもスペーサーですが、こちらは樹脂製。
鉄筋から型枠まで、つまり基礎の仕上がり面までの距離を一定に保つ役割です。
基礎工事で使用するスペーサーの写真

最後は鉄筋を切ったり曲げたりするための機械、カットベンダーです。
電動式もありますがこれは手動式。かたい鉄筋が面白いように曲がります。
鉄筋を加工するカットベンダーの写真

今回紹介した基礎の配筋は、コンクリートを打設すれば当然見えなくなってしまう部分。
着工直前に少し図面を手直しした事もあり、その部分の確認も兼ねて見に行って来ました。
現場で測ってみたら、しっかり新しい図面の指示通りにつくられていましたよ。


2016-07-06 | Category 一文字の家, 建築 

 

馬目地のブロック塀

先行造成で、馬目地になるようコンクリートブロックが積まれた『一文字の家』。
“馬目地”(または破れ目地)というのは、ブロックを半分ずつずらして積む方法の事です。
これに対して縦横とも目地が通っているのは“芋目地”と呼ばれます。
馬目地で積まれたコンクリートブロック塀
何という事はない、土留めの役割をする単なるコンクリートブロックですが
今回は積み方に関して「馬目地で積んでください」と少しだけ口を挟ませてもらいました。

この家で使う一文字葺の外壁は、デザインのつくりとしては馬目地に近いものがあります。
そのイメージに対応させたという意識も多少働いてはいますが、建物の足元が単調に
なるのを避けたかった、動き・変化を付けたかったというのが、この積み方でお願いした
理由として大きなところです。

そこそこ距離もあります。
馬目地で積まれたコンクリートブロック塀
ブロック積の高さがある程度高い場合、馬目地にするとガチャガチャと少しうるさい印象に
なってしまうおそれもあり、スッキリ端正に見える芋目地が一般的です。
馬目地の高い塀で、全体として恰好良くまとまっているケースも見たことはあるので
そのあたりはデザインする人のセンスが問われる部分ではないでしょうか。


2016-06-18 | Category 一文字の家 

 

地鎮祭の前夜祭

明日は『一文字の家』の地鎮祭。

ところがちょうど友人の結婚式と重なってしまい、残念ながら参加ができません。
そのことは以前からお施主さんに伝えてはいたものの、やはりなんだか申し訳ないので
夕暮れ時にひとりで現場に行って来ました。

地縄が張られ、テントも用意されて準備万端の現場です。
日暮れ前の現場の写真
完全に日が落ちる前に何とか間に合って良かった・・・
一日早いですが、これから始まる工事の安全を祈願してきました。


2016-06-10 | Category 一文字の家 

 

偶然の供物

本日は『一文字の家』解体の義が執り行われました。
これから解体工事に入る家に対し、今までの感謝と、別れをする日。
自分の生まれ育った家でなくたって、どうしても感傷的な気分になります。

現場に着いてすぐ、傍らにこんなものが置かれているのを見つけました。
葉っぱに乗せたチャナンのようなお供え物
もしバリ島に行かれたことがあるのなら、街中のいたるところでこれに似たものを
目にした記憶があると思います。
それは“チャナン”とよばれる神々へのお供え物。
万物に神が宿るとされる教えにのっとり、花や米などを女性たちが供えます。

以前行ったバリ旅行で、その風景は特に印象に残っていたので、今日これを見たときも
お施主さんがそうした風習を知っていて、少し華やかなお供えの意味合いでひっそりと
置いたものかと思いました。

ところが・・・
チャナンを置く子供の手
黙々とこれを作っては置いていたのはご夫婦の幼いお子さんでした。
異国の風習など知る由も無く、近くにある花や葉を集めて遊んでいただけなんですね。
しかし奇しくもそこは敷地の角。お清めをする対象となる場所です。
今日その場所にこんな可愛らしいお供えをしてくれたことは、もうすぐ解体の時を迎える
この家にとっても、きっと嬉しい事だったのではないでしょうか。


2016-05-22 | Category 一文字の家