『碧南の家』ナラ材を使った幅広の複合フローリングです。
いつもは完全な無垢のフローリング材を使うことが多いですが、今回は“複合フローリング”
という種類のものを使用しています。
床暖房を採用する『碧南の家』では、温度・湿度の変化による材の伸縮が極めて小さい
こちらの複合フローリングを選定しました。
表面の厚さ3ミリほどが無垢のナラ材となっているので、仕上がりは無垢フローリングと
何ら変わりません。
そして下の写真は床暖房パネルを入れるためのひと手間。
柱の中心付近で、床下地に段差が付いているのが見えると思います。
奥側が標準の床下地高さで、手前側(LDK)の床下地は基礎を含めてまるごと12ミリ
下げています。
床暖房パネルの厚さが12ミリなので、こうしておく事で仕上げは同じ高さにできます。
しかし150ミリ幅のフローリング材というのはやっぱりいいですね。
安価なものは幅75ミリ程度からありますが、幅広材は風格が全然違います。
『碧南の家』2階の子ども部屋から、1階のリビングを見下ろしたところです。
高いところが苦手なため腰が引け気味。
この開口部は後々、ちょっとした宅内アスレチックの一部になります。
リビング部分の軒高や屋根勾配も、この開口部を基準にして決められました。
2階では通常の石膏ボードに先行して“構造用プラスターボード”が貼られていました。
先日のダイライトやハイベストウッドなどと同じく、こちらも構造用面材の一種。
壁倍率は1.5倍となっています。この家では3枚使用しました。
関連記事:ダイライト VS ハイベストウッド
『碧南の家』では羊毛(ウール)断熱材を使用しています。
羊毛なので、文字通りヒツジから刈った毛を断熱材として壁に充填するものです。
柱と柱の間に施工されはじめた羊毛断熱材。
防音に関してはセルロースの方が優れているものの、本来の目的である断熱性能では
セルロースとほぼ同等です。難燃性のため、燃えやすいのではという心配も無用。
搬入時はこのように袋詰めされてやって来ます。
住宅で使用される断熱材には様々な種類がありますが、中でも多いのはグラスウールです。
細いガラス繊維を綿のようにして空気層を作る構造はまさにガラスの羊毛(ウール)。
ただし構造は似ていても素材としての特性はまったく違うので、それぞれに適した
施工方法を選択することが肝要です。
家全体で呼吸するような、一貫して“通気”に重点を置いた作りの家には羊毛やセルロース
などの自然素材が向いていて、グラスウールや発泡ウレタンなどの断熱材は“高気密”
に重点を置いた作りの家に使用するのが良いかと思います。
『碧南の家』バルコニーで、向かい合って火花を散らすダイライトとハイベストウッド。
どちらも地震力や風圧力などに抵抗する構造用面材です。
向かって右が、普段よく使用しているダイライト
左はハイベストウッド
壁倍率も同じ2.5倍、大きな違いは無いかに思われる両者ですが、今回なぜこんな
張り分けをしているかというとバルコニーが関係しています。
構造用面材というのは基本、その強度を構造計算に含めるためには2階の外壁に張った
1枚の面材を、そのまま2階の床レベルよりも下まで張り延ばします。
ところがバルコニーがあると、その床が邪魔をして下に張り延ばすことができません。
こうした“床勝ち”の構造の場合でも構造用面材としての施工が認められているのが
ハイベストウッドなのです。
だったらわざわざ張り分けなくても、今回は全部ハイベストウッドで良かったんじゃない?
というのは、あとでちょっと思いました。
Worksのトップにある住宅の設計実例写真(キャプチャー画像)を一部差し替えました。
また、“岡崎市” “中庭” “和モダン” “スキップフロア” などのタグを付けることで
それに関連する家が選びやすくなったと思います。
まあ、そもそも物件数自体がまだそれほど多くないのですが・・・
↓画像をクリックすると Works のページへ行きます。
ページを訪れたユーザーが、実例集の一覧からどの家を見てみようかと検討するにあたって
まず手がかりになるのは外観だと思います。
部分を切り取ったこだわりの一枚よりも、外観が一覧で並んでいた方が絶対に選びやすい。
そのこと自体はホームページ立上げ当初から重々承知していました。
問題は“設計者が見せたい写真と、ユーザーが見て分かりやすい写真は違う”という事です。
これには随分葛藤があり、結果自己満足で比較しにくいページになっていた気がします。
特に何かきっかけがあった訳ではないですが、ふと、今朝改めてそんなことを思ったので
さっそくプチ改革に取り組んだ次第です。
色味が減って温かみが少し無くなっちゃったかな?という気がしないでもないですが
見やすくはなったのではないでしょうか。
余談ですが、並べてみて初めて外観写真を似たような構図で撮っている事に気づきました。
まったく無意識だったので、これは多分僕の癖ですね。
軒数も多くないことですし、この機会に簡単にそれぞれの物件の外観と内部を並べて
一軒ずつ紹介したいと思います。
1.六名の家:岡崎市/新築/木造2階建て
まず外観。白い吹付塗装が青空に映えるシンプル路線です。
準防火地域にありながらなるべく防火サッシとしなくて済むよう、平面形状を工夫しました。
内部はかなり和モダンを意識しています。
シンボルとなる、竹を使った特注の照明シェード越しに見る室内と緑のきれいな庭。
自分としては、根幹にあるこの家のコンセプトを表す写真は外観よりもこちら。
玄関・LDK・寝室・トイレなどで間接照明を多用しました。
2.友達の家:中津川市/築60年フルリノベーション/木造2階建て
この外観写真は元々この家のキャプチャー画像として使っていたものです。
地域柄もあり、木の縦格子をふんだんに使った落ち着いたファサードとしました。
町屋風の外観ですが、中は意外とスッキリ。外と中で一番ギャップがある家です。
ダイニングのペンダントライトはVITA SILVIA。奥にはイームズハウスバード。
3.大平町の家:岡崎市/新築/木造2階建て
防音・プライバシーに配慮し、広い通りに面した北側には一切窓がありません。
パッと見は平らな屋根に見えますが、奥の方へ向かって緩い傾斜を付けた勾配屋根です。
内部はウッドデッキ敷の中庭を囲んだロの字型をしています。初の完全中庭型住宅。
中庭に面して天井まで届く大型の掃出し窓を付け、家の奥まで光が届くようにしました。
中庭は目の届く安全な範囲でお子さんのプール遊びなどが出来て安心です。
4.高丘の家:浜松市/新築/二世帯/木造2階建て
ロの字型ではありませんが、こちらも中庭のあるコートハウスです。
白い外壁にアクセントとして一部天然石を張り、夜間はライトアップで陰影を出します。
中庭部分は4匹の犬たちが走り回るため、植栽を中心としたドッグランを設けました。
撮影時は植栽もまだで、天候も良くなかったため機会があれば再トライしたいところ。
珍しくラグジュアリー路線の内部。これは横並び型のダイニングキッチンです。
ご家族、ご友人が集まれるよう造作のダイニングテーブルは長さ2.6メートル、9人掛け。
ハイサイドライトのあるPCコーナー正面の壁は、全面マグネットがくっつく仕様です。
5.落合の家:中津川市/築60年フルリノベーション/木造2階建て
外壁を張り替えた以外、外観にはほぼ手を加えていないので外観写真はありません。
ですのでキャプチャー画像はリビングの一角を写した写真を使用していますが
これこそまさに上で述べた自己満足写真の最たるもの(笑)
この部分だけ見ても何だか分からないですよね?
外観写真も無い事ですし、画として気に入ってはいるので、これだけはこのまま使用します。
外回りは手を入れていない分、中は跡形もなく間取りを変えました。
全く日の当たらなかったLDKを裏庭に向けて配置し、木々や小川を眺めながらの食事
ができる位置にダイニングテーブルを。現在はウッドデッキも併設されました。
6.藤枝の家:藤枝市/新築/木造2階建て
外観はマットシルバー、マットブラック2色のガルバリウム鋼板仕上げ。
色とともに、張り方もそれぞれ縦張りと幅広の横張りで変えています。
内部も方向性としてはモダン路線です。
リビングはダイニングキッチンよりもステップ2段分床を下げ、地窓から見える庭の緑が
より近く感じられるよう配慮しました。床を下げた最大の理由です。
さて、これで全部です。
現在複数の物件が同時に進行中ですが、完成まではしばらくかかるので
今年載せられるのはせいぜいあと1、2軒かな?
急がず、焦らず、地道に、軒数を増やしていけたらと思います。
時々見かける板塀のつくり方で、“大和張り(やまとばり)”という手法があります。
支柱を挟んだ表裏に隙間を空けて板を互い違いに張り、視線は遮りながら通風は確保する
目的で用いられるもので、通常は板が縦になるよう張られます。
正面からはソリッドな木の壁に見えるため、格子よりも面としての重厚感を出したいときに
使ってみようと前々から考えていました。
今回計画中の物件で大和張りの板塀を作ることになりましたが、場所が洗面脱衣室のすぐ横。
隙間から反対側が見えてしまってはいけないので、材料のサイズを検討中です。
原寸大のモックアップ・・・と呼ぶには、あまりにあまりな物体。
A4コピー用紙の裏紙を使って大和張りの形状になるよう工作しました。
このモックアップでは、4.5センチ角の支柱を挟んで両側に、幅9センチ・厚さ1.5センチの
板を取り付けました。板同士の隙間は3センチ。
隙間の向こうにはちょうど裏面の板が来るよう、表と裏で取付け高さをずらしてあります。
板を本来の縦張りではなく横に張るので、これは“横大和張り”ですね。
正面から見る分には問題なさそうですが、角度によっては・・・見えるなぁ・・・
もう少し各部材の寸法や隙間の幅を検討する必要がありそうです。
『碧南の家』の、現場にあった“かけや”という巨大な木槌のようなものです。
建築工事中で、これが一番活躍するのは建て方のとき。
例えば下の写真は階段部分からの見上げですが、こうした架構を組んでいく際に
かけやを使って材料を上から叩き、組み立てを行います。
建て方の日、木を打ち付ける乾いた大きな音が響いているのはこれを使っている音です。
かけやを担いで梁の上を歩く大工さんの姿は絵になりますね。
昨日三重県まで海を見に行ったついでに『海の博物館』に立ち寄りました。
20年ほど前に家族旅行で一度来たことがあり、訪れるのはそれ以来です。
ここは海辺に生きる人々の生活に焦点を当てた博物館です。設計は内藤 廣さん。
様々な記録や、木船その他の漁具などが木造の広い内部空間に収められているのですが
僕はどうしても展示物そのものより建物本体の方に興味が・・・
たっぷり横幅のある平屋建てに、いぶし瓦で葺いた軒の深い屋根。
個人的には和風の建物が一番格好よく見えるプロポーションがこれだと思います。
こんなふうに高低差のあるランドスケープだと更に引き立ちますね。
予定には入っていない思い付きの寄り道だったので、滞在時間はわずかでしたが
少年時代とはまた違った視点で見られてよかったです。